本研究は、平成9年度(1997年)に立ち上げた「花祭り研究会(伊藤善夫・桜井弘人・武井正弘・中村茂子による)」が、最初に着手した「文書史料に基づく花祭り研究」の成果である「花祭りの信仰圏-小林花祭りを中心として-」(「民俗芸能研究」第25号)、「花祭りの舞・構成と意義」(『芸能の科学』26)を踏まえ、花祭り伝承地域に所蔵されているさまざまな文書史料(祭文・呪文等)の追加収集を行うことから始まった。それら収集史料の中から選別した新史料について翻刻・註釈を行い、その内容を分析することで、現行花祭りの次第中に、かつてどのような目的で使用されていたものであるかを追究し、江戸時代末期に中断した集落合同の式年祭である大神楽から、各集落の花祭りへ定着した過程を考察、花祭りの芸能史的位置づけを行うことを最終目的とした。 代表者が、「花祭り研究会」の協力を得てまとめた成果は、次の3本である。花祭りの演目中最も重要なものとして伝承されている「しずめ」の考察、鬼の芸能の代表としてあげられる「花祭りの鬼」に関する考察、奥三河と呼ばれる山国の人々が、一年を無事に暮らすために花祭りにかけた「祈願」に関する考察である。
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