3年間にわたる本研究は、現地調査、史料収集、データベースの作成という3過程をとった。 1.現地調査は、島根県から山口県萩市にかけての山陰地方、北九州・福岡、大分方面、および対馬、広島から岡山と、愛媛から徳島にかけての瀬戸内海地方、および沖縄県石垣市への調査を実施した。2.収集史料の主なものは、国立公文書館に収蔵される「海員調査票」「水火夫調査票」等の史料群。三菱経済研究所付属史料館に所蔵される「船員履歴書」。山陰地方各湊の「客船帳」等の海運史料。また、岡山の城下町では水主の他国稼ぎを記録した史料など貴重な文献の所在を突き止めることが出来た。3.作成したデータベースで研究成果報告書に掲載したものは、次の5点である。三菱経済研究所蔵の「船員履歴書」(1)No.1438(明治16(1883)年〜同39(1906)年)、(2)No.1910(文久元(1861)年〜明治36(1903)年)、(3)No.1909(明治16(1883)年〜同37(1904)年)、および(4)No.1908の「場所限傭員履歴書」(明治30(1897)年〜同38(1905)年)で、その入力項目は、整理番号、氏名、生年の和暦、生年の西暦月日、戸籍住所、身分関係、取得免許の種類、免許取得のために修業した場所、免許を取得したときの和暦、その西暦月日、その時の年齢、乗船の汽船・帆船の別、船名、船の規模(トン数)、馬力、船主、職名、給料の順とした。ただし、年齢など史料に記載されていないものは未入力のままとし、太陽暦採用以前については、旧暦のままとした。(5)は島根県簸川郡大社町教育委員会所蔵・鷺浦の「客船帳」で、収録データは安永8(1779)年から大正8(1919)年まで連続している。入港の年月日、船主の居住地(国名、郡・領名、町村・湊名)、船主、船頭、直乗り沖乗りの別、船の規模、積み荷の種類、上り下りの別、備考の順に項目を入力した。これらのデータベースを分析することにより、日本海運業が近世から近代へと連続していく一端を解明することができる。
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