文化3、4年の蝦夷地における日露間の紛争のもった政治史的な意義をさぐるために、この紛争に関わって生み出され、全国的に流布した風聞・風説、さらには幕府を批判する言説などの史料を各地の史料所蔵機関におもむいて調査した。 1、 財団法人三井文庫所蔵の三井家史料を調査し、三井の江戸店、京都本店の記録類に書き留められた日露紛争関係の風聞をコピーで入手した。この史料は、ロシア艦の絵図を含み、他には見ることができない貴重なものである。 2、 九州大学九州文化史研究施設所蔵の三奈本黒田家文書を中心に調査し、ラクスマン来日以来の良質な日露関係史料をマイクロフィルムで入手した。 3、 長崎県立図書館所蔵の長崎奉行所関係史料のなかの関係史料の所在調査を行った。なお、長崎奉行関係で、東京大学法学部法制史資料室が所蔵する文化8、9年の長崎奉行遠山景晋の日記を焼付け写真で入手した。なお、これは従来知られていない史料である。 4、 日露紛争のさいに蝦夷地へ出兵した秋田藩と津軽藩の史料を調査するため、秋田県立文書館、弘前市立図書館におもむく予定である。 追加採択のため、研究期間がきわめて制限されたため、蒐集した史料類の分析・検討は十分に行うことができず、多くが今後に残されている。
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