本年度は研究計画の二年次目にあたり、(1)近代東北史関係文献を通した本研究テーマの概要整理、(2)東京都内研究機関における「東北論」関係文献の調査収集、(3)青森県・秋田県・山形県内における「東北論」関係文献の調査収集をおこなった。 1点目については、民衆レベルでの対外認識研究や国民国家形成論研究における「東北論」の位置付けを検討し、その成果として、「朝鮮認識と東北意識」(田中彰編『近代日本の内と外』吉川弘文館、1999年11月、所収)を公刊した。前年度にまとめた「単一民族神話批判と『マルクス』」は未刊だが、本論文を基礎にした「〈東北〉史の意味と射程」(仮称)を2000年5月予定の歴史学研究会大会にて報告することになっている。 2点目については、『日本書籍分類総目録』の検索をおこない、初年度に『国立国会図書館蔵書目録・明治期』『明治新聞雑誌文庫所蔵雑誌目録』『明治新聞雑誌文庫所蔵図書・資料類目録』『日本近代文学館所蔵主要雑誌目録』などから作成したデータベースを拡充した。 3点目については、青森県立図書館、弘前市立弘前図書館、秋田県立図書館、秋田県立公文書館、山形県立図書館など3県5機関で関連文献の調査をおこない、文献リストの作成をすすめるとともに、学術的に貴重と思われる文献を複写収集した。 以上の研究より、つぎのようなあらたな知見を得た。第一に、近代東北民衆にとって、対外認識と地域意識との間には密接な関連が見られること。第二に、明治後期の対外膨張政索のなかで、一体的で同質的な東北イメージが形成されてくること。 これらの知見については、刊行予定の『近代東北の思想』(仮称、中央公論新社)でも論ずることにしている。
|