本年度は研究計画の最終年度にあたり、(1)近代東北史関係文献を通した本研究の論点整理、(2)「東北論」関係文献の補充調査収集、をすすめるとともに、研究全体の総括に向けて、(3)学会発表及び研究のまとめを行なった。 1点目については、文芸作品や文学研究、各地の自治体史における「東北論」の位置づけを検討し、「東北論」研究の視界を広く文化研究(カルチャラル・スタディーズ)として展開することを追及した。 2点目については、東京大学法学部近代日本法政史料センター(明治新聞雑誌文庫)、岩手県立図書館、盛岡市中央公民館、秋田市立中央図書館明徳館及び青森県史編纂室において、関連史料の補充調査収集を行ない、「東北」「奥羽」「東奥」などのキーワードを冠する単行本・新聞・雑誌のリストの作成を終了した。 3点目については、2000年度の歴史学研究大会近代史部会(テーマ:構成される〈地域〉)において、研究成果の一部である「〈東北〉史の意味と射程」を発表し、国民国家の形成と地域社会が相互に関係しながら形象化される過程について報告した。同発表は『歴史学研究』(第742号、2000年10月)に掲載された。 また、本研究をもとにした「東北論」研究を『〈東北〉論の世界』(仮題)としてまとめており、2001年度早々に刊行の予定である。同書は、「東北論」の形成過程を歴史的に分析することで、国民国家=「想像の政治的共同体」論(B・アンダーソン)を実証的に批判するとともに、「東北」社会と「西南」社会の反照関係について触れ、両者の空間的な類型化・秩序化及びそれらの上にたつ「日本」「日本人」「日本史」の問題点についても論じた。
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