研究題目「室町時代における幕府と王朝の寺社政策」の初年度として、当初の計画通り未刊史料の写真版購入と史料の筆写収集に重点を置いた。購入した史料は、国立歴史民俗博物館所蔵の広橋家旧蔵文書のうちから「兼宣公記」(広橋兼算の日記)、天理大学附属天理図書館所蔵「吉田家日次記」(吉田兼煕、兼敦、兼致、兼右の日記)、京都府立総合資料館寄託「随心院文書」、東京大学史料編纂所所蔵影写本「三千院文書」、興福寺本坊所蔵文書、西大寺文書等である。このうち「兼宣公記」は足利義満、義待期の基本史料であり、『史料纂集』第一として刊行されているがすべてではない。また、「吉田家日次記」も室町期の基本史料であるが、購入分は未刊部分である。この二つの史料は足利義持、義教期を検討する上で必要なものである。「随心院文書」「三千院文書」はこの時期の門跡の問題を考える上で必要なものである。興福寺大乗院・一乗院、青蓮院、畳殊院、仁和寺などの門跡寺院を含めて、室町期の門跡と幕府との関係は、それ以前の関係とは一線を画していると考えられ、門跡の相伝・安堵を含めて現在、東大史料編纂所所蔵の写真帖・影写本の調査研究を行っているところである。この問題は近世の門跡寺院の問題につながると考えている。新規に購入した史料は以上であるが、このほかに、刊本の調査を継続中である。『大日本史料』六編・七編、及び『満済准后日記』はおおよそ調査を完了したが、古文書等の調査はまだ手つかずの段階である。東大寺・東寺・醍醐寺・石清水八幡宮寺の調査はまず義満期とくに『大日本史料』六編未刊部分を中心に調査を行う予定である。
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