1、 本年度の計画では、(1)近世国家システムのなかで公家法や寺社法がいかに位置づけられていたか、という問題について検討(2)宮内庁書陵部などに所蔵されている近世社寺統制関係史料の複写(3)家綱の将軍宣下期を中心とした朝幕間係の検討を主に行うこととしていたが、それぞれの「成果」は以下のとおりである。 2、 (1)について得た知見は次のとおりである。 (1) 寺社法度として公儀権力の社寺法となった「寺社掟」は中世以来の内容を基調としている部分が存在していること。 (2) 一円支配の成立にともない、本所法や社寺法が一円支配権力のもとに置かれたものの、一円支配と齟齬しない部分についてはそのまま「存続」しており、その基調は近世に入っても継続していること。 (3) 所領宛行いに代表される公儀権力者を頂点とする国家システムと官位体系に象徴される天皇を頂点とする国家システムとの併存と前者による後者の支配がみられること。 3、 (2)については、白川家関係史料の大量の史料複写や本願寺などに関する刊行史料の購入を行い、整理・検討を行っている段階である。 4、 (3)については、内閣文庫や宮内庁書陵部で央料を検索したが、具体的に着手の段階に至っていない。
|