本年度の研究における史科採訪・複写としては、昨年度の研究に引き続き、宮内庁書陵部所蔵の白川家文書の撮影・焼き付けを行うとともに金光図書館の白川家文書の複写及びその準備を行った。また、内閣文庫の近世朝幕関係史料の複写をも行い、整理・分析を行いつつある。 また、岡山藩池州家文書マイクロフィルムや幕政関係刊行史料など、関連する史料の購人を行い、検討作業にとりかかっている。 史料の検討作業はまだ中途段階であるが、一応、以下の見通しを得ている。 (1)近世の神社統制においては、白川家、吉田家などの公家、朝廷、所在地の領主、幕府、さらには村落共同体の支配が機能していたこと。 (2)日常的統制は白川家や所在地に領主レベルで完結していたこと。 (3)非日常的統制は、朝廷レベルまで上がっていること、また、朝廷レベルで解決困難なものは幕府が指揮していたこと。 (4)近世の寺社支配は朝廷を頂点とする中世以来の支配機構を、基本的に温存して再編するかたちで行われていること。 (5)僧位、神号など権威的部分の給付権は、朝廷固有のものとして確保されていたこと。 (6)以上の在り方は、近世の王権の在り方と関係していること。
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