祭礼調査は関連史料の収集とともに、フィールドワークが重要である。祭礼史料は各神社や氏子集団に所蔵されており、また大名史料や庄屋史料等にも祭礼や芸能集団に関する史料が含まれている。これまでの研究において収集したそれらの史料にもとづき、最終年度として総合化をおこない、近代化が民衆文化に与えた影響について検討した。 本研究は、近世近代移行期、とくに幕末維新期を中心に幕藩権力から明治政府への権力交替が村・町の祭礼にどのような影響、規制をもたらしたのか、また規制を受けながらも祭礼を続ける民衆の意識を探ることによって、これまでの研究とは異なる当時の民衆像を提示しようとするものであり、筑前国宗像郡における寛永17年〜『内殿邑供日祭宮座帳』・寛保2年〜『十社王子並申王子御宮座帳』・天明1年〜『本木村御宮座記録』などの宮座関係史料や、福岡県立図書館に所蔵される「黒田家文書」・「太田資料」等の大名関係史料、また福岡藩の役者史料である「芦屋寺中関係史料」等によって、祭礼の儀式性だけでなく、歌舞伎・狂言の芝居や踊りなどの具体像とその変化を、社会構造の変化や権力との対応関係からとらえることができた。 残された課題もあり、明治期以降の変化についての検討が充分にはできなかったし、また、祭礼に対する領主規制、倹約令との関係など、藩権力との関わりからの検討をもっと深めていく必要がある。
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