今年度は、初年度に構成したデータの構造に従って本格的に入力作業を開始した。 すなわち、『公卿補任』原本のデータを(1)公卿データ、(2)補任データ、(3)叙位データ、(4)事項データの4つのファイルに分けてそれぞれ入力した。このうち(1)公卿データは、前年度に延暦元年(782)から寿永2年(1183)の間に公卿となった者に限定して、すでに基本的に入力を終えているので、(2)補任データ、(3)叙位データ、(4)事項データについても、これら公卿に関するデータがすべて収まることを想定して、桓武天皇治世から白河天皇治世までにとりあえず限定してある。この結果、すでに前年度入力済みの(1)公卿データ525件に加えて、(2)補任データ6693件、(3)叙位データ2602件、(4)事項データ1500件となり、データとしては予定していたすべての数をほぼ入力し終えた。 次に、実際にこのデータをどのように利用するかの検討を始めた。具体的には(1)〜(4)のデータをどのようにリンクさせ(うまくリンクできるかも含め)、どのような順に並べ替え、要求に応じてどのような情報を表示させるか、ということである。そこで実験的に、今回の研究の基本的な目標である、個々の公卿ごとにデータ・リンクによって(2)〜(4)のすべての情報を表示する「公卿個人情報」パネルを作成し、目的どおりの情報が得られることを確認した。また同様にして官職名ごとの「補任一覧表」を、いくつかの官職で作成し、これも当初の目的を達成した(この際、大臣・納言・参議などの公卿の官職のみならず卿・国守・衛府等一般の官職の補任表も作成できるようになったのが本研究の成果である)。次年度は、他のさまざまの使い方を検討すると同時に、操作性の向上を図る予定である。 また、こうした作業の結果、データ入力のミス、構成の変更、あるいはデータそのものの矛盾等、電子化することによる問題点も続出している。次年度以降、こうしたデータそのものの校正・校合・追加・検討も進めなければならない。
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