研究概要 |
地方豪族で天皇関係系譜と密接に関わるものの系譜の復原を追究した。中心はさほど有力とはみられない息長氏と丹波系が密接に王統譜に関わっていることについてである。 <息長氏>「息長(オキナガ)」を冠する系譜は『古事記』『日本書紀』に,とりわけ前者に顕著に伝えられている。息長氏は継体以降の大王・天皇と密接な関係にあったので,系譜に位置付けられているのは当然である。しかし,本来の息長氏関係系譜については従来明らかでなく,また「息長」を冠する王族名が王統譜に位置付けられた時期も明らかにされてはいなかった。そこで『古事記』『日本書紀』の息長氏関係系譜の原型を,人名の形態や夫妻関係から追究することで,復原し,それを通じて,王族名として位置付けられた時期を検討し,6世紀半ばの欽明〜敏違段階から7世紀初の推古朝における「天皇記」編纂にかけての時期が重視されることが明らかになった。(別記拙稿「『息長』を冠する王族の系譜をめぐって」) <丹波系>丹波(とくに律令制下で丹波とされた地域)には5世紀前半に有力な古墳が築造されていることから,有力な豪族が存在したと推測することは可能であるが,『古事記』『日本書紀』等の文字史料にはそれを示すものが見当たらない。5世紀後半ごろから没落したことが想定されるが,それにもかかわらずかなり詳細な系譜が伝えられている。系譜からその理由を検討した結果,息長氏と密接に関わっていたことが想定されることになった。(「丹波系系譜についての再検討」と題して公表予定)
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