1、はじめに、但馬国府の所在地をめぐる文献を収集し、長い研究史を検討することによって、問題点を明らかにした。特に、歴史地理的な方法のみならず、考古学による発掘調査成果、および出土遺物の検討が必須であることを痛感した。 2、次いで、複数の但馬国府推定地を訪れ、現地で出土遺物の調査を実施した。特に、木簡については、実見することによって、釈文の訂正を加えた点が少なくない。 3、国府と判定する場合の根拠について考察をおこない、その結果は、旧稿に修正を加え、研究成果報告書に掲載した。 4、国府の文書行政を考えるために、都城における文書行政のあり方をあわせて分析し、「式部曹司庁の成立」という論文にまとめた。 5、古代但馬に関する全ての木簡の集成を行った。その結果、但馬出土木簡166点、都城出土の但馬関係木簡37点、合計203点にのぼった。 6、最終年度には、以上の資料に再検討を加え、研究成果報告書としてまとめた。同報告書は、1「但馬地方出土の古代木簡」、2「都城出土の但馬国関係木簡」、3「但馬国府の木簡」よりなり、1と2は木簡の資料集、3は旧稿を改訂したものである。 7、但馬地方では、この間も重要な木簡の発見が相次ぎ、それをうけて木簡学会でも但馬特別研究集会を計画するにいたっている。今回作成した資料は、今後、古代の但馬国を検討する際の基礎的資料となるものである。
|