1、但馬国府の所在地をめぐる文献を収集し、研究史を検討することによって、問題点を明らかにした。特に、歴史地理的な方法のみならず、考古学による発掘調査成果、および出土遺物の検討が必須であることを痛感した。 2、但馬国府推定地とされる場所を訪れ、国府としての立地を考え、また現地で出土遺物の調査を実施した。特に、木簡については、実見することによって、釈文の訂正を加えた点が少なくない。 3、国府と判定する場合の根拠について考察をおこない、その結果を、旧稿に修正を加えつつ、研究成果報告書に掲載した。 4、国府の文書行政を考えるために、都城における文書行政のあり方をあわせて分析し、「式部曹司庁の成立」という論文にまとめた。 5、古代但馬に関する全ての木簡の集成を行ない、最終年度には、研究成果報告書としてまとめた。同報告書は、1「但馬地方出土の古代木簡」、2「都城出土の但馬国関係木簡」、3「但馬国府の木簡」よりなり、1と2は木簡の資料集、3は旧稿を改訂したものである。 6、但馬地方では、この間も重要な木簡の発見が相次ぎ、それをうけて木簡学会でも但馬特別研究集会を計画するにいたっている。今回作成した資料は、今後、古代の但馬国を検討する際の基礎的資料となるものである。 7、残された課題として、但馬国府の位置を遺物・遺構から判定することである。材料は揃えたが、なお十分な考察を行って、結論付けたい。
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