本年度は、重慶国民政府の戦時華僑行政に対して、汪精衛・南京傀儡政権がどのようにに対応し、それがいかなる意義と限界を有していたか、本格的な解明をおこなった。次いで、すでに書き上げた南京国民政府・重慶国民政府の華僑政策と華僑の動向の内容を強化、充実させると共に、それに対抗する形での傀儡衛政権の政策を有機的に分析を加えた。さらに華僑間の矛盾・対立をも考察しながら、日本の神戸、長崎、横浜、沖縄等、及びアメリカの抗日・親日動向に関する研究を前進させた。 〈本年度の研究実施状況〉 (1)まず、本年度の最優先課題は江精衛・南京傀儡政権の僑務機構の実態、及び意義と限界を解明し、かつその華僑政策に対して、上海、広州等への帰国華僑、香港の華人がいかに対応したかを考察することにあり、これは全て計画通り完了した(これは「研究成果報告書」第三章に所収)。 (2)傀儡政権、日本占領地の華僑政策と華僑の動向を明らかにするために、すでに入手した『南京日報』、『中華日報』等の本格的な分析をおこない、かつ補強のため外交史料館で傀儡権関係档案を調査・収集した。 (3)不明点も多い日中戦争時期のアメリカ華僑の動向と特色を明確にするため、スタンフォード大学フーバーライブラリー等を中心に、ロサンジェルス、シカゴ、ニューヨークの中華総商会、中華会館等で現地調査をおこない、史料調査、収集した。 (4)沖縄華僑の実態把握のため、また長崎・台湾各華僑との結びつきを考察するため、琉球大学図書館、沖縄県公文書館、北谷町文書館で史料調査、収集した。 (5)本年度は科研費最終年度なので、3ヵ年の報告書を作成した。
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