本研究は、清末の上海で刊行された絵入り旬刊紙『点石斎画報』の基礎的データを整えることを目的にしたものである。 昨年度は、主として『点石斎画報』の原本の所在確認とその調査を行った。その結果、東洋文庫や関西大学増田渉文庫などにも、若干の原本があるが、東京大学東洋文化研究所が最も多く原本を所蔵していることが解った。その後、東京都立中央図書館の実藤文庫にも、若干の原本が所蔵されていることが判明した。 そこで、本年度は、昨年度に引き続き東洋文化研究所所蔵本を調査すると共に、実藤文庫所蔵の原本を調査した。実藤文庫本は、数は少ないが、重版ではない原本であるところが貴重である。 そのほか本年度は、全冊が揃い一般的な広東人民出版社本の重刊本を底本に、昨年と本年の調査に基づくデータや、鄭為編『点石斎画報時事画選』(中国古典芸術出版、1958年)・天一出版社『点石斎画報』本(全6輯・全30冊、1978年)・孫継林編『晩清社会風俗百図』(学林出版、1996年)・庄子湾編『十九世紀風情画・民俗風情二百図』『十九世紀風情画・名勝新聞百図』『十九世紀風情画・海国叢談百図』『十九世紀風情画・街巷奇開百図』(湖南美術出版、1998年)など、最近増えつつある『点石斎画報』のダイジェスト版のデータもとり入れ、データベース化を行いつつある。来年度は、これらを完成させ、印刷したいと思っている。 清末の上海では、『点石斎画報』の外にも、『繍像小説』や『図画日報』など、多数の絵入りの雑誌が刊行されている。従来、これらは日本にはほとんど所蔵されていなかったが、最近、中国から続々と復刻版が出版されつつある。それ故、これら『繍像小説』や『図画日報』と『点石斎画報』との比較研究も必要であろう。本年度は、その『繍像小説』に関して、「清末の反迷信小説『掃迷帚』の作者について」という論文を発表した。
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