研究計画に基づき、第二年度に当る本年度は魏晋南北朝時代の具体的書式の復元に取り組んだが、初年度の研究内容である公文書の種類と機能の整理のための諸種史料の調査、収集になお遺漏があると思われたので、その補充作業も続行した。 具体的には、研究補助を利用し、正史など諸種文献から、公文書を表示するとおもわれる用語の内、初年度に収集した表・奏・啓・辞等の外、刺・関・解・移・牒等の語を抜粋し、分類整理してカード化するとともに、出土文書・墓誌銘等についても、公文書関係の文章の調査・整理を行った。 以上の作業の外、魏晋南北朝における公文書の全体像を把握するために、『文選』・『文心雕龍』・『文苑英華』等における文書関係記事を調査し、上行・下行や、官庁間に通行する文書の体系に関して、ある程度の認識を得た。現在その結果を公表する準備をしているところである。 具体的書式の復元については、(1)『宋書』礼志、(2)吐魯番文書の分析を行った。(1)については、元嘉二五年皇太子監国儀注の「関」にみられる諸種文書から、案・啓等の上行文書、令のような下行文書の書式を推測した。いずれ研究成果報告書でその結果を公表する予定である。(2)については、主に北涼関係文書にみえる啓・刺等に注目して考察した。但し、吐魯番文書中の北涼関係文書の書式が魏晋南北朝文書とどの様に関係するかについては、なお結論を出すことはできなかった。 なお、前年度の成果の一部であった「啓」についての考察は、学術誌上で公表した。但し、その具体的書式については、吐魯番文書中の「啓」を参考になお検討中である。
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