研究概要 |
研究課題関連の和文文献を、国内外の図書館・古書店を利用して調査・収集した。その結果例えば京都大学農学部図書館に、国内の図書館等で未見の満鉄経済調査会の経済資源調査報告書が若干あることを知ったが、その中に内モンゴル関連のものも含まれていることがわかった。調査・収集した文献は、整理に努め、これまで作成し続けてきた文献目録データベースに、それらの書誌情報を入力することを行い、データベースの充実を行った。 基礎的研究として、明治末から大正初期にかけて関東都督府の行った内モンゴル調査の報告書及びそれに関連する四種の地誌、『東部蒙古誌草稿』、『東部蒙古誌補修草稿』、『東蒙古』、『東蒙古の真相』を取上げ内容の分析を行い、つぎの諸点を明らかにした。『東部蒙古誌草稿』とその補修版『東部蒙古誌補修草稿』は実地踏査に基づいて纏められたものであり、両者をあわせ読むことによって東部蒙古の地誌の理解がより完全なものとなる。一方『東蒙古の真相』は『東部蒙古誌補修草稿』より先に刊行されたために、そして『東蒙古』は『東部蒙古誌補修草稿』とほぼ同時期に刊行されたために、ともに『東部蒙古誌補修草稿』を利用することはなく、ただ『東部蒙古誌草稿』のみに全面的に依拠し、それを単に要約又は抜粋したにすぎない。ただし『東蒙古』が無価値ということではなく,新たに調査を実施しその成果を載せており、その点注目すべきである。だがその調査の成果は、地誌の部分に取込まれておらず、生のまま旅行記が掲載されているに過ぎない。一方『東蒙古の真相』は、新たな調査を全く実施しておらず、その意味で最も価値の低い。ただそれは、清朝の覆滅後のモンゴルの新たな動きとそれをめぐる国際関係について注意を払い、『東部蒙古誌補修草稿』、『東蒙古』に先んじていち早くそのことを附録に書込んでいる点に、特徴を見出せる。
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