本研究は、近代中国の地域社会における秩序や規範の問題を、列強と清朝中国中央、及び地方の郷紳の、それぞれの対抗の中で考察するものである。その際、研究の対象としたのは、湖南省長沙で発生した租界を巡る問題である。そして、その点から、中国の「国家」としての特質、中央と地方の関係などに言及したいと考えている。 平成11年度は以上の課題のもとに、主に日本側に保存されている史料の調査と、その複写にあたった。まず、東京大学東洋文化研究所で『湖南省例成案』全82巻の調査を行い、ついで東洋文庫で同所所蔵の清末民初の湖南省、及び長沙市に係わる地方志の調査にあたった。そして、所蔵史料の目録を作ると共に、『長沙県志』(1871年)、『善化県志』(1877年)、『湖南郷土地理参考書』(1910年)など、重要な史料は一部を複写した。また、日本外務省外交史料館で、関連する史料の調査と複写を行った。ただし、当初計画していた湖南省長沙市での史料の調査は、時間の都合で行いえなかった。明年度に期したい。 本研究の課題に対する研究・報告の一端は、「清末、湖南省長沙の街巷と民衆-人のつながりと行動様式」と題して、『近きに在りて』第36号(1999年11月)に掲載した。ここでは、主に清末の長沙における人々の結びつきの有りようを、日常・空間・情報の3点を手掛かりに論じた。このように、平成11年度の研究計画は順調に行われ、多くの成果をあげた。明年度は以上の研究成果の上にたち、本研究の仕上げを行う。
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