本年度は、海外資料調査(プラハ、ブダペスト、ウィーン)に出かけ(10月中-11月中旬)研究題目に関係して以下の史実と資料を確認できた。(1)チェコの身分制等族議会は、30年戦争におけるプロテスタント等族の掃滅、カトリック貴族の入封(グーツヘルシャフト)そしてボヘミア宮廷官房(ウィーン)からの集権的統治の開始によって、その地域形成能力を喪失した。カトリックの教区教会制に対抗する北東ボヘミアのチェコ兄弟団が唯一、チェコの社会的自律性を保障した。三月革命期には「オーストリア・スラヴ主義」(F.パラツキー)がオーストリア帝国議への統合を促した(2)ハンガリーの指令制度をもつコミタート制は、地方ジェントリ層の社会的自律性の上に展開した。三月革命前のボジョニの全国議会への身分制的結集からデブレツェン独立議会(カルヴァン派大聖堂)への結集の過程である独立戦争の結果、コミタートの地域主義的機能は、相対的に低下する。独立戦争敗北による軍政直轄統治体制下のコミタート(県)制による集権統治の開始は、ハンガリーにおける地方自治制の発達をアウスグライヒ(1867年)以降も大きく制約する。(3)シュタイエルマルクのヨハン大公関係文書、L.コシュート、I.セーチェニ関係文書の所在を確認するとともに、チェコは別としてハンガリーではようやく1990年に地域史研究の全国学会、REGIOが発足、学会誌が刊行されていることを確認できたことは最大の収穫であった。 セーチェニ図書館、ブダペスト大学図書館、クレメンティウム(プラハ) セーチェニ博物館(ナジツエンキ)エステルハージ宮殿(フェルテード)(調査機関)
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