研究概要 |
1, 共和政成立から内戦までの社会の激動をその主体者であったスペイン人の精神・文化の変容を通して考察しようというのが本研究の目的であった。 2, 日本での本格的研究はないので、スペイン語、フランス語、英語文献での研究の摂取に努めた。新刊書、中古書の購入のほか、国立国会図書館、一橋大学、専修大学、法政大学、東京大学、東京外国語大学、群馬大学、宇都宮大学、静岡大学、信州大学、山形大学の各図書館所蔵の関係文献を閲覧した。 3, スペイン内戦中の共和国地域で出された文化雑誌の復刻が進んでいるが、これらのうち可能なものを入手でき、その内容を分析できた。 4, 研究の中間的発表をおこない、関連研究者の助言を受けることができた。 5, 以上の研究のなかで以下のことを明らかにできた。1931年4月の共和政の成立が政治・社会・経済のみならず、スペイン人の精神・文化の変容においても一つの画期であったこと。共和政の教育政策が教会関係者に大きな衝撃力をもったこと。1936年に始まり1939年に終わる内戦では、反乱派地域でカトリック精神が強調されたのにたいし、共和国地域では、「民衆文化」運動が高揚したこと、とくに農村文化運動、識字率向上運動、さまざまな女性組織が生まれたこと。内戦中の両派の教育政策の内容と実際。共和国の大統領でスペイン人の文化について歴史的にも実践的にも深く考察したアサーニャのスペイン文化論を明らかにできたこと。
|