研究概要 |
研究課題「14・15世紀ドイツの政治史・政治思想史の基礎的研究」については,刊行史料等の適時の入手と,導入した設備備品によって,データの収集,史料の読解に向けた基礎的研究を遂行することができた。特に史料の読み取りについては,各種の機器及びOCRソフト等の活用により,多少時間がかかるとはいえ,特定概念の検索と照合が容易となりつつある。研究の成果は完成した論文1編,執筆中の論文1編に結実した。 今年度執筆した論文は,「金印勅書体制と選帝侯同盟-ヴェンツェルの廃位と1400年の国王選挙をめぐって」という表題で,本学部紀要に発表することとなった(刊行は平成11年度)。引き続いて「『ジギスムントの改革』に見られる帝国・帝権意識」という表題の論文を現在執筆中であり,同じく平成11年度の本学部紀要に発表することになる。 15世紀前半に成立したとされる『ジギスムントの改革』等の史料・文献を研究する過程で,その前提となる「金印勅書体制」の実状と,帝国基本法たる同勅書に基づく帝国政治の進行に関して,新たに究明すべき課題が得られ,『改革』研究の前提として此の問題を解明し,研究を深化・拡大させた。従って,本年度は『改革』の研究と並行して,14世紀後半のドイツ帝国の政治と政治思想の研究を行い,「金印勅書体制」に基づく選帝諸侯の政治的な諸動向と国王側の対応とを,1400年の国王・皇帝選挙の実施に焦点を当てて検証し,15世紀の帝国改革の政治的・思想的前提を解明することができた。
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