1.ジェンダーは性差に基づいて構成される「人間の関係」としてとらえられるが、本研究は、こうしたジェンダーの視点に立ち、性差以外の他の人間の差異に基づく他集団(人種・エスニシティ、階級などによる集団)と性差に基づく集団との関係も視野にいれてきた。そしてこのようにジェンダーを多様な集団と関連付けることにより、これまでの女性史とは違った新しい女性史すなわちジェンダー史を方法論的に明らかにすることができた。方法論の探求と並行しながらアメリカ史に関する実証研究も行い、新しいアメリカ史の解釈を試みた。それらの研究の成果は、項目11に記載した論文として示すことができた。 方法論に関しては、新たな展開もあった。すなわち、研究の過程で、最近、研究の発展が顕著である公領域(public sphere)の概念を視野に取り込んだことである。ジェンダーと公領域との関係を方法論的に研究した上で、実際に第二次大戦下のアメリカ女性の労働をとりあげた理論的実証的研究も行い、国際会議で発表した。さらに、この延長として第二次大戦下のアメリカにおける10代の少年少女の労働についての実証的研究も行い、これは今年度未(3月30日)にアメリカ合衆国セントルイスでのアメリカ史研究者の学会(Organization of American Historians)で発表することになっている。 また、以上の理論的実証的研究で得た成果を応用して、20世紀アメリカ史をとらえ直す仕事に取り組み始め、現在、著書の形で来年度中の出版をめざして執筆中である。
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