本研究は、アメリカ合衆国における公民権運動の歴史的意義の検討を行い、アメリカ合衆国現代史あるいは20世紀史において、極めて重要な位置を占めるこの運動の歴史的意義を問い、適切な歴史的評価を下すことを目指す研究の一環として行われた。 公民権運動はアメリカ合衆国の現代史において極めて重要なな事項でありながら、まだわが国においてはまとまった概説書の類が出版されていない。本研究の最終目標として念頭においたのは「市民権時代」とも称される改革の熱気にあふれた、第二次世界大戦後から1960年代にかけてのアメリカ合衆国の重要な歴史局面を、一連の「下からの」地域闘争という市民権運動の特徴に注目して、抉り出すことにあり、その歴史的意義を探る点にある。残念ながら研究代表者の能力の限界から、本課題の報告書においては「第I部」、すなわち1950年代後半の闘争局面に関するまとめしかなしえなかった。ただし、主要参考文献を渉猟したノートや、3年間にわたって行った現地の関係者並びに研究者とのインタヴューの要約録を巻末に付したことで、「第II部」のデッサンの代わりとさせていただいた次第である。実は研究代表は本研究課題の事実上の2年間わたる延長願いとなる新たな2年間の計画の申請を昨年行い、科学研究費補助金・基盤研究(C)(2)・課題番号13610462「現地聞き取り調査を主要方法とする米国公民権運動史研究」として幸いにもそれが認められ、この残された課題に取り組むことになっている。地域闘争を主要視角とした公民権運動の全体像の叙述を完成するために、あと2年間の猶予をいただきたい次第である。
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