本年度は当初の計画通りに、20世紀初頭のイギリス・フェミニストの国際協力の構想を、1904年に始まる「婦人参政権国際連盟」(IWSA)の機関誌『ジュス・サフラジャイ』の記事およびイギリスの代表的婦人参政権団体、穏健派のNUWSSの『コモン・コーズ』、過激派のWSPUの『ヴォウツ・フォア・ウィメン』、『女性の勇者』などの関連記事を最大限収集し、読破することに専念してきた。 婦人参政権運動の国際化が開始されたのが、第一次大戦前夜であったから、IWSAにおける加盟各国の議論は、女権が軍国主義に対抗する母性主義と結びつけられて、非常に広い範囲で複雑な問題が提起されたのがわかってきた。大戦前夜に参政権闘争に没頭していたイギリスのフェミニストにとって、IWSAの参政権と母性と戦争をめぐる論争は複雑すぎたように思われる。とりわけイギリスが参戦するや、NUWSSもWSPUも愛国主義のうねりの中に飲み込まれていったから、フェミニズムの国際化においてイギリス・フェミニストの姿勢を考察する作業も、愛国主義と反戦平和の両陣営への分裂によってさらに錯綜したものとならざるを得ない。 次年度は、考察の時期を1914年以前と以後に分けながら、上記二大組織にとどまらずイギリスの多様な女性団体の「国際化」の考えを綿密に整理し直す必要性を痛感している。
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