本年度も平成10、11年度に引き続き、「国際女性評議会」(ICW)と「婦人参政権国際連盟」(IWSA)の20世紀初頭から両大戦間期にかけての活動とそれら国際的女性運動へのイギリスのフェミニストの関わり方を、専らマイクロフィルム史料の読破によって調査してきた。本年度の研究実績は以下のとおりである。 第一次大戦前夜のイギリスの二大婦人参政権団体(NUWSSとWSPU)のうち、組織的に上記ICWやIWSAと持続的に関わったのは、穏健派のNUWSSの方であった。しかし、NUWSSの内部でも、フェミニズムの国際的連携構想は、時期によって大きな変化が見られ、また組織として統一されてはいなかった。したがって、NUWSSの創設時から1918年まで会長職にあったM・G・フォーセットに焦点をあててマイクロフィルム史料集Women's Suffrage Collectionのパート2の'The Papers of M.G.Fawcett'からその構想を探った。時期的に国内の運動に集中せざるをえなかったという事情を考慮しても、彼女のIWSAへの初期の参与は不熱心に見えた。その理由の一端は、国際協力への疑念というよりはアメリカのサフラジストによって指導された運動への疑念にあったと判明した。さらにNUWSS内部の「インターナショナリズム」をめぐる不一致は、とりわけ諸国家間の大戦と1918年のイギリスにおける婦人参政権の成立ののちに、「ユニヴァーサル・シスターフッド」の概念のみならず、平等市民権、市民的自由の獲得、反戦平和の主張などの論議を通してより鮮明になっていった。その「不一致」の進展過程を、フォーセットと、いわゆる「民主派サフラジスト」(キャサリン・マーシャルなど)とのやりとりを通じて跡づけることができた。
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