古代の土器の製作過程には、製作地による材料の差、混和材の添加や水簸による加工、焼成技術の差、などの要素が加わり、それは道具としての機能や装飾とも深く関連している。研究の目的は、これらの諸点を自然科学的な手法によって復元することにあり、以下の点を明らかにした。また成果のいくつかは研究発表欄にあげた中で発表した。 1 製作地と材質の関係--群馬県藤岡市猿田II遺跡と本郷窯跡群の埴輪に加わる砂の種類には違いがあり、周辺の古墳出土の埴輪との関係を検討する要素を明らかにした。成果の一部は国立歴史民俗博物館での研究会において発表した。 2 土器の混和材の添加の事例--(1)石川県真脇遺跡の縄文土器の砂の混和率を求めた結果、蓋などに砂を添加しない精良な土器があり、機能と関係し晩期に顕著にあらわれる。(2)香川県中間西井坪遺跡の古墳時代の土師器に、角閃石や輝石などを意図的に混和した土器があること、同県鴨部川田遺跡の弥生前期の土器では、砂の混和量が器種と器形の大小と関係するなどの諸点。(3)長野県川原田遺跡の縄文土器には、混和材の種類が土器型式と密接に関係するものがある。 3 土器の色調と焼成法との関係--中国遼寧省四平山遺跡の黒陶について、X線マイクロアナライザーによって、表面の黒色を示す部分の成分を測定し、炭素濃度が高い結果を得た。したがって光沢をもつ黒色は、特殊な粘土を用いたり、焼成後に油脂成分を塗布して着色したものではなく、還元雰囲気の中で焼成され、炭素の吸着によって生じたものであることが明らかになった。
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