本研究の成果は、以下のように要約できる。 1.2003年3月現在、難波が検出確認した同笵銅鐸の総数は32組86個で、本研究によって、1960年段階の5倍余り、1979年段階の2倍余りに、同笵銅鐸の確認例が増えた。 2.同じ鋳型からこれまで最多の7個の同笵銅鐸を製作した例を検出し、石製鋳型を使った場合、7個の同笵銅鐸の製作が可能なことを明らかにした。 3.傷んだ鋳型の文様を全面的に彫り直して、鋳型を再生使用した例を初めて検出した。 4.同笵銅鐸が菱環鈕式ですでに作られており、外縁付鈕式では、基本的にすべての鋳型で同笵銅鐸が作られたこと、従来の推定とは異なり、鋳型の素材の石から土への変化に先立って同笵銅鐸が作られなくなることを明らかにした。 5.補刻は外縁付鈕2式で出現し、以後多用されること、文様が凸の鋳掛けは扁平鈕式新段階で出現することを明らかにした。 6.同じ組の同笵銅鐸では舞の型持の大きさや形が類似していることから、同じ組の同笵銅鐸は比較的短期間で作られたことを明らかにした。 7.銅鐸の製作総数の新しい算出法を考案し、現在知られている数の少なくとも3倍以上の銅鐸が製作されたことを明らかにした。 8.銅鐸鋳型の構造とその変化を明らかにした。 以上、本研究による主要な成果を記した。本研究によって、同笵銅鐸に関する知見は飛躍的に増加し、多大な成果を上げることができた。今後、本研究の成果を基礎として、弥生時代の地域間関係や遠距離の地域間の交流のありさまなどについて、より深化した議論が可能になるものと期待できる。
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