(1)中部・東海地方 (1)愛知県尾張元興寺の軒平瓦には、山田寺式軒丸瓦と組む軒平瓦の重弧文の変容である簾状文が多く見られる。これは昨年度調査した群馬県上植木廃寺の軒平瓦の主文様のひとつであり、東山道を経由しての軒瓦情報の伝播を示している。 (2)尾張元興寺で同上軒平瓦と組む軒丸瓦の丸瓦接合技法が、片ほぞ形加工である点も重要である。 (2)東北・関東地方 (1)宮城県古川市伏見廃寺出土の奈良県法輪寺同笵軒丸瓦について:法輪寺創建軒丸瓦は船橋廃寺式に属し、これは山田寺式軒丸瓦の祖型である奈良県吉備池廃寺(百済大寺候補)の軒丸瓦(仮称百済大寺式)のさらに祖型である。同笵関係は確定できたが、これが確実に伏見廃寺採集という保証がないことが、関係者の証言で明らかになった。 (2)千葉県龍角寺の山田寺式軒瓦の丸瓦接合技法は、片ほぞ形加工である可能性が低く、創建年代についてはなお再検討の余地がある。 (3)近畿地方奈良県飛鳥藤原地区 (1)山田寺出土の山田寺式軒丸瓦の研究で、片ほぞ形加工が660年代まで存続し、楔形加工に変化することが判明している。しかし、7世紀後半の当該地区他寺院の山田寺式軒丸瓦の場合、丸瓦先端はすべて未加工であるので、造瓦組織は関与しない文様だけの受容であることが判明した。同時に、山田寺の創建期の片ほぞ形加工は、飛鳥寺「星組軒丸瓦」および斑鳩寺「弁端点珠軒丸瓦」の造瓦組織に元来あった技法を継承したものか否かについても、今後検討を要する。 (2)同上調査時に奈良国立文化財研究所で開催された「第3回古瓦研究会」に出席し、「船橋廃寺式軒丸瓦」と「(仮称)百済大寺式軒丸瓦」の時空分布について検討し、あわせて「山田寺式軒丸」との型式概念との区分について議論した。
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