日本において馬具を出土する古墳は、5世紀後半代からその数が増え、7世紀後半代に古墳築造が衰退するにともなって減少する。その総数は現状で、日本全国で1500基をこえるものと思われる。古墳の規模そして地域ごとの出土数の偏差はかなり大きく、これは調査密度の問題とは考えられない。そこには、馬具の保有に関わる歴史的な背景があったと見て間違いない。本研究は、馬具を副葬する古墳について地域ごと古墳群ごとに分析を加え、出土馬具の変化と馬具副葬古墳の規模・構造の変化を有機的にとらえようとした。 馬具出土古墳の概要と出土馬具の内容を資料化し、これをデータベース化した。さらに、地域ごとの分布図を作成し、古墳群単位で発掘調査がおこなわれた遺跡については、古墳の築造順序と馬具出土古墳の出現頻度を分析した。また、出土馬具についてはセット関係の復元につとめ、報告が不十分な資料については観察と実測調査などをおこなった。 基本的には、群集墳から装飾の部品を欠く馬具が多数出土し、古墳群内の大型墳あるいは首長墳からは金銅装など装飾的馬具が出土する。この傾向が顕著なのは福岡などの地域があり、静岡もこれに似るが横穴群から装飾的馬具が出土する。中小古墳から装飾的馬具を出土する傾向が顕著なのは、島根東部・長野・大阪・奈良などがある。また、関東地方では、首長墳への馬具の集中が顕著に認められる。時系列での馬具セットの変化をもう少し綿密に検討していきたい。
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