今年度は、昨年・一昨年度に引き続いて中世漢字音研究資料の調査を行い、それを終了させるとともに、研究成果をまとめつつ、その公開の方法を模索し、所期の目的をほぼ達した。 1広島大学付属図書館、国立京都博物館、名古屋大学などを訪れ、中世期漢字音資料を調査した。本研究は基礎的研究を目指すものであることを鑑みて、おおよそそこにはどのような利用可能な資料があるかに主点をおいて、諸資料の本研究における価値を検討し、予定通りそれを終えた。 2昨年度、韓国において入手した韓国中世漢字音研究の成果というべき『三音通考』や『韻略』などと、『聚分韻略』(『三重韻』『略韻』)とを、形式、内容2面から比較検討を行い、両者間には共通点と相違点があることを明らかにした。 (1)三重韻形式において、両者は形式上きわめてよく似ていること。 (2)しかしながら、内容上すなわち漢字の標出順においては、大きな相違があること。 韓国側韻書の標出順は当該漢字の意義にこだわらない順序で掲出が行われている。 これに対して、『聚分韻略』は『節用集』に見られるような意義分類の枠のもとで標出が行われている。 この2点は、韓国語漢字音研究との比較における中世日本漢字音研究史解明の〒が狩りの一つのなるものと言える。 3上記成果のデータベース化、そのインターネットに載せての公開の手だてやより効率的な方法などについて、先学者の体験やその方面に明るい研究者などから学び、基盤の整備を行った。
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