1、[語彙表の計量的分析] 「八代集形容詞語彙表」によって計量的分析を行った結果、下記の点などいくつかの新しい知見が得られた。(1)中古の形容詞の特徴の一つは複合形容詞の現れ方にある。その点で『古典対照語い表』のような短い単位による語彙表では研究に不十分であり、本研究のような長単位の設定が有効である。(2)次の2つ分析結果及び2の分析結果より、形容詞語彙の共時的・通時的研究において、「平均使用度数」という研究観点が有効であることが明らかにできた。八代集では時代が下がるに従って、a平均使用度数が減少する。b平均使用度数が、感情形容詞では減少し属性形容詞では増加する傾向が認められた。 2、 「鎌倉時代十四文学作品の形容詞用例数語彙表」を完成させ、一部語彙分析を試みた。作品のジャンルと平均使用度数の間に相関性が認められた。残る2作品『岩清水物語』『弁内侍日記』の作用は継続中。 3、 [用例数の再点検]「八代集形容詞語彙表」について、資料とした総索引に単位の不統一が少なくないので、原文に当たって語形を点検した。一部問題が残った語を除き、作業をほぼ終了した。 4、 『和英語林集成』初版・再版・三版『言海』『日本大辞書』による「近代三大辞書の文体情報付き形容詞対照語彙表」のパソコン入力をほぼ終了した。校正・点検は次年度の予定。 5、 [用例数の再点検]『源氏物語語彙用例総索引』によって形容詞を集計(3)。さらにそれを長単位による統一基準によって別に集計した(4)。これらを、『古典対照語い表』での数値(1)、『源氏物語大成』による既発表語彙表の数値(2)と比較する作業は、次年度に継続となった。 6、 [シソーラス作成]平均時代の形容詞による古典形容詞シソーラスの作成を継続した。
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