本年度は、近畿地方(京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県・大阪府・兵庫県)の各地点での談話テキストに出現する特徴的な方言形を検索・抽出し、計量的な処理を施したものについて、文法事項の記述とその比較を行い、考察・分析を加えた。 各文法ジャンルについて、テキストでの形式の現れの一端を明らかにし、テキストの形態による方言コードの運用の違いなどにも注目した。 関西圏の大学生を対象に収録した談話とその文字化を利用して、談話データの分析を行い、現在の若年層のいわゆるネオ方言における実態の解明を試みた。特徴的な方言コードについては、この若年層での使用実態と、高年層における伝統的な方言形の出現状況を比較・対照した。特に、京都と大阪においては、高年層と若年層の談話データの対照記述を進め、各年層を対象にした動態データとの対比・検討も行った。 また、「全国談話資料データベース」で欠けている重要地点のひとつである対馬厳原町豆酘地区での(研究分担者・真田信治の調査・収録による)談話資料をまとめて、分析を加え、資料集『対馬・厳原町豆酘方言の自然談話』(平成12年9月30日、60ページ)として刊行した。 なお、この研究プロジェクトの概要の一部は、国立国語研究所の広報誌『国語研の窓7』において報告し、その意義を一般にアピールした。
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