本年度の研究実績は、次の通りである。 (1) 『平家正節』の翻刻作業の継続。・・・ 昨年度より始めた平曲譜本の翻刻計画。本年度は『平家物語』第二巻分の『平家正節』(尾崎家本)の翻刻を終了した。平成十二年度は第三巻分の予定。 (2) 甲南女子大学所蔵本『平家物語』の翻刻作業。・・・ この本は譜本ではないが、よみがなが沢山付されている。そのよみがなは、平曲のよみぐせの影響をうけているのではないかと思われる。昨年度に引き続きこの傾向を確認した。翻刻は巻第一を終了した。 (3) 国会図書館所蔵の古活字体『平家物語』(中院本)の句点の調査。・・・ 前年度に引き続き七巻分を調査、全巻を終了した。句点と〈語り〉との関連に関する調査でもある。いずれこの本の句点に関するまとめを発表したいと考えている。 (4) 京都大学文学部蔵「譜本」および『平家物語』の調査。 ア、波多野流譜本の影印本(勉誠社刊)と原本との照合。・・・終了。 イ、『平家正節』の影印本(臨川書店刊)と原本との照合。・・・終了。 ウ、一部譜(豊川本系統か)入『平家物語』の調査。・・・次年度へ継続。・・・読む本としての『平家物語』と譜本としての『平家物語』の関係を探る好材料となるのではないかと予想される貴重な伝本。
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