本年度の研究実績は、以下の通りである。 (1)『平家正節』の翻刻作業の継続。…本年度は、『平家物語』の第三巻分の翻刻作業。「赦文」から「大臣流罪」までの16句を終了。平成13年度は、第三巻の残り3句から始めて、第四巻分に進む予定。 (2)甲南女子大学所蔵本『平家物語』の翻刻作業。…「座主流]から「大納言死去」までの10章段を終了。 (3)京都大学文学部所蔵「平曲譜本」および『平家物語』の調査。 イ『平曲正節』の書誌的再精査。…早稲田大学演劇博物館の資料調査と関連あり。 ロ『平家物語』(豊川本系の譜の一部分書き込みのある本)の調査。…胡粉で抹消する前の本文を覗いてみたが、訂正本文と一致するものが多く、書き込み事情不可解。よって、精査を中断。譜の書き入れについては、新たに「那須与一」も同様であることを発見。 (4)早稲田大学演劇博物館の平曲関係資料調査 イ『平家物語節附本』(20冊本)の調査。…入手した紙焼写真との照合が中心。新たに岡正武関連かと推定される紙片を発見。(検討は今後に) ロ『平曲正節目次並琵琶弾法』(1冊)の調査。…書名などから京大本『平曲正節』のツレではないかと推測していたが、改めて書誌的な調査を行うことで、ほぼ確実にツレらしきことを確認。 (5)京都府立総合資料館所蔵『波多野流平家語り本』(28冊)の調査。…入手した紙焼写真との照合。「京都府立図書館本」を昭和9〜10年に書写したという広島大学文学部本との関係調査の課題が出てきた。広島本は完本であるのに対し、現存の「京都府立総合資料館本」は64句のみの零本であるため。今後の課題である。
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