平成10年度は、物語の本行本文と詳細な書入れ注記を併せ持つ『源氏物語』古写本としての実践女子大学図書館所蔵公条本の翻刻・入力作業を行い、分析に備えるためのテキスト・データを作成する一方で、同書の本文の諸本間における位相を調査し、発表した。 また、平成11年度は、公条本の分析をするのに並行して『覚勝院抄』の調査・分析を行った。該書はそれまでの『源氏物語』テキストや注釈とは相違して、物語の本行本文とともに厖大・詳細な書入れを有しているところに特徴があるものであり、本来はデータベース化に向けて最も至難な資料と考えられたが、あえてそれを整理することで、複雑多岐な『源氏物語』の伝流史・注釈史・研究史の素材たりうることに挑戦しようと考えた。 本年度は、以上の内容をふまえ、研究終了年度であるので、平成10〜11年度にわたって調査した成果をまとめ、報告書を作成した。また、『源氏物語聞書覚勝院抄』(汲古書院刊)の別冊所収のもの(研究分担者・上野の作成)以来まったく試みられていない同書の翻刻テキストを、同時に公開することとした。
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