研究概要 |
近世に出版された源氏物語の本文と、その注釈書の体系的な整理を目的とし、全国各地の図書館、文庫等の諸本を調査してきた。これまでの研究結果としては、次のような成果を得ることができた。 l 源氏物語の本文の出版の嚆矢は、慶長年間の伝嵯峨本であり、それに次ぐのが古活字版とされ、いずれも本文は青表紙本系統とされてきた。これまで調査してきた伝嵯峨本は一種類で、すべてが青表紙本ではなく、部分的に河内本と別本が混在していることが判明した。江戸初期の本文の流布状況を知るには貴重な意義があるもの思う。 2 江戸期に出版された、源氏物語関係書は、注釈書、梗概書、絵本、辞書、系図類を含め、現在のところ113点を見いだしている。ただ、初版だけの本もある一方では、梗概書の『源氏小鏡』は絵入りの有無、版形の大小も含めると5,6種類は存するし、『男女装束抄』のような有職故実書においても、増補されながら元禄9年、享保年、寛政12年、文政8年、天保5年版等が伝来する。このように、一点一点の書誌し、それぞれの作品の意義を調査している。
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