平成十年度においては、東京大学・慶応大学・国文学研究資料館・国立国会図書館・九州大学等でそれぞれ中世小説の伝本について調査し、許可の下りたものは写真撮影や複写を行い、また翻刻を行って、本文を蒐集した。また、中世小説や散逸物語に関する関連の文献の調査・収集を行った。さらに、コンピューターを購入し、挿絵をカラーでCD-Rに保存できるようにした。これにより、複数の作品における挿絵を容易に比較できるようになった。また、資料検索に必要な図書を購入した。 (1) 東京大学…附属図書館で、『十二人姫』の書誌的事項について調査し、複製本によって複写を行った。文学部国文学研究室では、中世小説の関連資料を収集した。 (2) 慶応大学…三田メディアセンターにおいて、中世小説『かざしの姫君』『ひめゆり』等の閲覧と書誌的調査、翻刻、並びに複製を行った。 (3) 国文学研究資料館…中世小説関係の論文の検索・資料収集等を行った。 (4) 国立国会図書館…中世小説『かざしの姫君』等の複製を依頼し、散逸物語関係の資料を収集した。 (5) 九州大学…附属図書館で、中世小説『酒呑童子』『たなばた』の写真撮影を行い、関係の資料の収集を行った。 これらの収集した諸本の本文・研究図書・論文については、現在、整理・考察を行っている段階である。また、これらの調査研究を活かして、年度内に研究発表一回、紀要等の論文二編、出版社の論文集に一編執筆し、刊行された。また、文部省の在外研究員としてアメリカのハーヴァード大学・ニューヨーク公立図書館、アイルランドのチェスター・ビーティー図書館、イギリスの大英図書館・大英博物館・ケンブリッジ大学・オックスフォード大学の中世小説について調査・閲覧する機会を得て、写真撮影や複写依頼で、貴重な資料を入手できたのは、大きな成果であった。
|