平成12年度においては、まず、奈良絵本関係図書や依頼による紙焼き写真等を備えた。そして、今年度に主要設備品として購入したデジタルカメラ、平成10年度に購入した携帯移動可能なパソコンを携え、日本各地の図書館・博物館・美術館・文庫に赴き、奈良絵本の調査・撮影を行い、研究室のパソコンに映像を取り込んだ。今年度、奈良絵本類の調査に赴いたのは、京都国立博物館、京都大学図書館、誠心院、臼杵市立図書館、福岡県立美術館、蓬左文庫等であった。これ以外に、別の出張等の機会を使い、諏訪市博物館、信州大学図書館、名古屋大学図書館、鶴舞中央図書館、函館市立図書館、神宮文庫、神宮徴古館、斎宮博物館、大谷女子大学図書館、志学館大学図書館、山口県立図書館、広島大学図書館、多和文庫、京都称名寺等に行き、同様の調査を行った。最近の傾向として、図書館等では、奈良絵本等の貴重書を閲覧することが難しくなり、事実閲覧を拒否される場合もあり、ましてや撮影には応じてもらえないことが多かった。このような状況であるから、調査撮影が順調であるとはいえないが、ある程度の調査撮影を行うことができた。また、途中の段階であるが、奈良絵本の筆跡による分類は、少なくとも三人の筆跡について、特徴をつかみ、分類が完成しつつある。また、少数ではあるが、浅井了意等の筆跡も確認しつつある。以上の調査経過を、学術雑誌等に多く報告した。来年度は、さらに調査地を増やし、さらには新たな奈良絵本の存在を確認して、奈良絵本の基礎的な分類、研究を進めるとともに、これまでの成果をまとめたいと考えている。
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