一九九八年十二月の第一回訪台のおり、時間不足により未了に終わった調査を完成させるため、二〇〇〇年一月に中央研究院歴史語言研究所附属傅斯年図書館を再訪した。今回は前回作成した同館所蔵石印鼓詞札記の遺漏を補うかたわら、解題ならびに焦点を絞った論文を執筆するため、南通僮子戯の十三本半巫書の当時の抄本により石印出版したと思われる『西遊記』関係のテクストのいくつかを選び、通読しつつ資料を集めた。この間国立政治大学中文系の陳錦〓教授、国立清華大学の胡万川教授とこの石印鼓詞をめぐる話し合いの機会を持った。帰国後、『風陵文庫目録』著録の沢田瑞穂氏旧蔵中国俗文学関係文献が閲覧が可能となった早稲田大学図書館を訪れ、石印鼓詞に相違ないと思われる資料を調査した。また同じ頃神奈川大学に訪問学者として滞在中の余大喜氏と南通僮子戯をめぐって討論する機会をもち、その方面の専門家曹琳氏に連絡してもらった。 なお一九九九年十二月には韓国ソウルにゆき、国民大学校で開催された韓国中国小説学会創立10周年紀念国際学術発表会に参加し、「『宣和遺事』より見る水滸説話と揚家将説話」の題で発表をするとともに、高麗大学校図書館所蔵の中国小説ならびに俗文学関係資料を調査し、同大学校中文系雀溶〓教授及び中国復旦大学黄霖教授と情報交換をした。また、二〇〇〇年一月には来日した中国社会科学院文学研究所所長の揚義氏と東京大学東洋文化研究所で情報交換をした。なお三月には京都大学人文科学研究所に調査におもむく予定である。
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