本研究は、中英語期の借入語の増大と統語変化の関係性の解明を視野に入れつつ、英語の語彙が総体としてどのように発達してきたかを調査しようとするものである。このために、電子辞書を用いた英語語彙の語源データベースの作成ならびに中英語期の統語変化の記述が本研究の主要な課題である。 データベースとしては、当初使用を予定していたOxford English Dictionary 2nd ed.on Magnetic Tapeが版元の事情により入手出来なくなったため、EDR英単語辞書、Concise Oxford Dictionary 8th ed.(COD8)、Merriam-Webster Collegiate Dictionary 10th ed.(WC10)の三つの電子辞書をもとにデータベースの作成を行うことにした。EDR英単語辞書はコンピュータ上の自然言語処理を目的として編纂されているため、語源データベースのコア資料として適当であることが分った。しかし、この辞書には語源情報が記載されていないため、COD8およびWC10の語源情報を抽出し、データベースに加えることが必要になった。現在この作業を続けている。 データベースの作成と並行して、中英語期の統語変化の詳細の研究を行った。統語変化のマクロ的な記述よりは、ミクロ的な記述が必要であると思われるので、ChaucerからShakespeareへ至る期間における多数の個人語を調査する方法を取った。具体的にはPaston Lettersに現れる数人を選び詳細な文法比較を行った。
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