すでに行った研究の中で、音韻過程は次の元素的な音韻的操作、二つに収斂されるという可能性を指摘した。 音韻素性の自律分節的な拡張(これを私はSpreadαと呼ぶ) 音韻論的要素の配置に課せられるテンプレートと相互作用する要素的除去過程 本研究はこのような元素的な音韻操作がいかなる概念的な必然性(conceptual necessity)を有するものかを追求するということを主な目的とした。とくに音韻論的な強さが時間・空間的な元素に帰されることを"A Principles and Parameters Approach to the Dichotomy of Fortition vs.Lenition in Phonology"の中で述べ体系化を試みた。このような音韻論的な研究とともに、Jackendoffの三部門併存モデルに基づく意味論的な研究をも行い、そのなかですでに音韻論のディフォルト規則に関する私の提案の吟味を行った。とくに"A Minimalist Observation on Inalienable Possession"において、音韻論の同様の形式のディフォルト規則が意味部門にもあることを主張し、それらがJackendoff(1997)(とくにpp.23-25)において想定されている対応規則に相当する可能性を指摘した。このように音韻論研究のみに研究を局在化させることなく、意味理論との形式的、実質的な統合を図る、という目的をも内包しているという点においてこの研究は独創的である。さらに"On the Notion of Phonological Word within a Principles and Parameters Approach to Phonology"においては、音韻的語が時間的な次元を捨象した要素であり、これにより、普遍的な音韻操作のひとつ、「Spreadα」の適用方向が説明されることを主張した。
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