(1)不定詞補文をとる動詞にはV-NP-to-VPの構造に生じるものがある。これらの動詞は一定の基準に基づいて、want、persuade、believeの三つのタイプに分類される。しかしこれらの基準をallow、permit、force、orderなどの動詞に適用すると矛盾する結果が得られる。この問題点は、これらの動詞をECMタイプと分析し、意味特性を一定の推論規則によって説明することにより解決される。また、allow/permitを意味上mayの使役形と分析し、force/orderを意味上mustの使役形であるとする分析を提案した。 (2)最新のミニマリスト・プログラムは、GB理論と異なり、文法的な構造のみを派生するように文法理論が組み立てられている。このアイデアによると、計算部門に対して、派生の途中では誤りを犯しても出力が正しければよいとする弱命題と、派生は正しい構造を生成するようにのみ適用されるとする強命題の2つの可能性がある。そこで、ミニマリスト・プログラムにおいて提案されている、言語は判読可能条件(legibility condition)に対する最適解(optimal solution)であるとする最も強いミニマリストの命題に関して、計算部門における操作は文法的構造のみを派生するように適用されるとする強命題を提案し、現在のミニマリスト理論における問題点の指摘とその解決法について論じ、従来の規則適用に課せられる適用条件は言語の計算部門には存在しないことを論じた。従来の規則の適用条件によって説明されていた事象は、知覚の方法など文法以外のメカニズムによって説明される。
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