イギリス・ルネサンス劇テクストの分析をとおして得た、シェイクスピア時代の登場と退場に関する結論のうち、特に重要なものを挙げると、以下のとおりである。 1.シェイクスピアや彼の同僚(book-keeper、俳優など)は、登場と退場をある時間を要する動き、すなわち、開始から完了までしばらく続く動きとして扱っていた。 2.楽屋と主たる演技の場である舞台前部との間の歩行には、台詞4行分くらいの時間が与えられていた。 3.グローブ座のような大きな舞台では、退場と登場とのオーヴァーラップが、時として極めて効果的に使われた。 4.Bernard Beckermanは、楽屋と舞台との間の左右のドアのうち、一方のドアは基本的に登場、他方のドアは退場に使われた、という仮説を提起した。この規則はシェイクスピア時代の俳優たちにとって有効だったかもしれない。 5.儀式的な登場や退場など、特殊なものは左右のドアではなく、その中間の開口部から行われたかもしれない。 6.シェイクスピア時代、舞台全体が常に一様に「舞台上」だったわけではなく、'Enter'と 'Exit'/'Exeunt'というト書きも中心的な演技との相対的関係において成立するところがあった。
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