今年度は3年計画の最終年として、これまでの理論の問題点の整理・検討と関連するデータの収集を進めると同時に、3年間の研究の総括を行った。とくに、生成文法においてこれまでなされてきた研究の中から、構造の不確定性との関連性を有する統語構造に関する記述を抽出整理し、その理論的・経験的問題点を明確化した。さらに、最近の極小主義(Minimalist Program)および最適性理論(Optimality Theory)に基づく炉論的・実証的研究を検討し、統語構造の不確定性との関連でその問題点を整理した。 生成文法の統語論研究において、これまでさまざまな構成素構造を調べるテストが開発され、文の構造の解明という目標の手立てとして用いられてきた。それらのテストの結果は必ずしも一致せず、場合によっては矛盾する結果が得られることが知られているが、最近その結果が矛盾でなく生じるような統語構造の理論が提案されてきている。その中でとくに重要なのはPesetsky(1995)の平行的な2つの構造を立てる理論およびPhillips(1996)のParsingを文法と同一視する理論であると思われるので、それらの理論とUshie(1994)以降提案している平行的多重構造を取り入れる理論との比較検討を行った。その結果、PesetskyにせよPhillipsにせよ、いずれかの層の1つの構造あるいはある段階での1つの構造が、ある統語現象に関与すると考えているが、その1つの構造だけを考えていては不十分な説明しかできず、複数の構造が同時に存在し、それらの構造が相互に影響及ぼしあうことを認める理論を立てる必要があることが明らかになった。
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