研究概要 |
「英語散文の連続性」の検証にとり、「ノルマン人の征服」に続く1世紀半の期間は、英語史研究の上で文献的空白が長く最大の難問となっている。言語的解明は困難ではあるが緊要の課題であり続けている。本研究課題は後期古英語期の代表的な説教散文がこの期間書写されていること、異写本間の異同を厳密にたどることによって通時的、共時的な言語的変化・変異を読みとることができることに着目する。後期古英語期を代表するAelfricとWulfstanには11-12世紀を通じ加筆・書写された、比較的多くの異写本が残されており、両説教家の説教散文を伝える異写本のテクストを、写本の句読点を含め厳密に検討の上転写して、電子テクスト化し、さらにそれらを成立年代順にパラレルに並置し、異写本パラレル・テクストを作成し、英語史研究支援の電子テクスト資料を作成し、比較研究を行うことを目標とする。第1期となる平成10,11年度においては、主としてWulfstan写本を中心に比較研究を行う。 本年度は、Wulfstanの説教散文の集成であるDorothy Bethurum,The Homilies of Wulfstan(1957)中の全作品について、それぞれ異写本テクストの入力を行いパラレル化をはかった。入力時の精確度を高めるため、個々の写本の各葉のイメージのデジタル化にも一部つとめた。一部完成した基礎資料に基づきミ言語的比較研究を行い、「英語散文の連続性」検証の可能性を検討した。その成果は研究発表に記したFisiak & Oizumi,eds.(1998)所収の論文3よび1999年D.S.Brewer(Cambridge)から出版予定のFrom Wulfstan to Richard Rolle:papers exploring the′continuity of English prose′に反映されている。
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