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2000 年度 実績報告書

両大戦間におけるイギリス文化ならびにヨーロッパ文化の社会思想史的考察

研究課題

研究課題/領域番号 10610461
研究機関東京外国語大学

研究代表者

鈴木 聡  東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80154516)

キーワード記憶 / 伝統主義 / モダニズム / ナショナリズム / 時間感覚 / 歴史意識 / 個人の主体性
研究概要

1.一昨年度、昨年度に引き続き研究の深化をめざし、1920年代における伝統的価値観の危機、同時代における歴史意識の特性をさぐった。
2.研究の一環としてジョン・クーパー・ポウイスの長篇小説『ウルフ・ソレント』(1929年)の翻訳を行なった。話法という側面で見れば伝統的リアリズムの特徴を色濃く残存させている一方、個人の時間感覚と内的意識を前面に浮上させている点で、この作品は、モダニズムとはなにかという問題にかんする重要な示唆を与えてくれるものといえる。
3.ポウイスの作品において注目すべき要素のひとつは郷愁(ノスタルジア)であろう。作品そのものの主題が「帰郷」にかかわっているだけでなく、作者自身がアメリカ合衆国にありながら本作品を執筆することによって擬似的、儀礼的に「帰郷」を企てようとしていることは明かである。その企図は、当然のことのように、みずからの魂の深部をさぐることを目的とした一連の省察に帰着することとなる。
4.この作品に読み取れるような遡行や逆行は、新たなもの(モダンなもの)と古風なもの(伝統的なもの)の表裏一体をなす関係を徴候的に示した好個の実例となっているといえよう。この地点からさらに展開されるべき研究の可能性は、「イングランド的」と称される価値観がこの時期に胚胎した理由を解明することにかかわってくるはずである。さらにわれわれは、一般にいう郷土愛とナショナリズムがどのような形で結びつくにいたるかという点にも着目しなければなるまい。個人の意識と共同体の意識を明確に定位させることができれば、多方面で探究されている記憶理論にたいしてなんらかの寄与を行なうこともできるだろう。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 鈴木聡: "記憶、歴史、忘却--W.B.イェイツの場合"イェイツ研究. 第31号. 37-48 (2000)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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