本研究は、ダーウィニズムが19世紀末のフェミニズムの思想と文学に対してあたえた影響をあつかうものであるが、1年目となる本年度はまず、性科学においてダーウィニズムがいかに伝統的な性の役割分担を科学的に支持するものとして利用されていたか、それにたいして世紀末のフェミニズムがいかなる反応を示していたか、といった一般的な問題にかんして、さまざまな分野にわたる当時の一次資料(とくに『北米評論』を中心とした19世紀末から20世紀初頭にかけての総合雑誌に掲載された論文)を収集しながら研究を進めた。 また、インディアナ大学の「ヴィクトリア朝女性作家プロジェクト」を中心に、フェミニズム関連の電子テクストを収集し、独自のアーカイヴを作成し、今後の研究の基礎資料を準備した。 そのような作業のなかで参考になったのは、1980年代から進展してきている、シンシア・イーグル・ラセット『性の科学』(1989)をはじめする、豊富な一次資料にもとづいたすぐれた新歴史主義的研究であった。1年目は、結局、このような研究の後追いに終始した感があったが、したがって今後の課題は一次資料の学際的な利用をつうじて、新しい視点を発見することにあるように思われる。精力的に一次資料の収集にあたりたい。 それとともに2年目以降は、フェミニズムとダーウィニズムの一般的な問題から進んで、フェミニズム作家の個別研究という具体的な課題をあつかうことになる。まずはケイト・ショパンとC・P・ギルマンであるが、彼女たちのエッセイを中心に読み進めたい。
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