(1)性科学においてダーウィニズムがいかに伝統的な性の役割分担を科学的に支持するものとして利用されていたか、それにたいして世紀末のフェミニズムがいかなる反応を示していたか、といった一般的な問題にかんして、さまざまな分野にわたる当時の一次資料(とくに『十九世紀』『北米評論』といった英米の総合雑誌の論文)を収集した。 (2)現在、フェミニズム関係の資料の一部は、インディアナ大学の「ヴィクトリア朝女性作家プロジェクト」のようなかたちで、電子化されつつある。学際的な多数の資料をあつかわなければならない本研究の性質上、インターネット上に散在するフェミニズム関連の電子テクストを集めて、個別研究のための独自の小さなアーカイヴをつくることは、今後の研究に飛躍的な効率化をもたらす。昨年度にひきつづき今年度もこの作業を進めた。 (3)19世紀末のダーウィニズムとフェミニズムの関連を示す論文としてアラベラ・ケニーリの「母性の才能」という1890年代の科学論文をとりあげ、当時の「新しい女」のフェミニズムにたいして、いかに同時代の科学的言説がダーウィニズム(および物理学的なエネルギー保存則)に依拠しながら反フェミニズム的立場を構築していたかを研究した。それを「科学と女性問題」としてまとめ、横浜国立大学教育人間科学部紀要に発表した。 (4)来年度は1890年代のいわゆる「結婚問題」をめぐる議論に注目しながら、そこでダーウィニズムが果たしていた役割を明らかにするつもりである。
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