本研究は、ダーウィニズムが19世紀末のフェミニズムの思想と文学に対してあたえた影響をあつかうものであるが、3年目となる本年度は、C・P・ギルマンのユートピア思想において、いかにダーウィニズムが受容されつつ批判されているかに焦点をしぼって研究した。『女の国』(1915)やその続編『彼女とともにわれわれの国に』が関心の中心に来るのは当然のことながら、「社会進化における一要素としての男女間の経済的関係の研究」である『女性と経済』(1898)その他の彼女の学術的エッセイの重要性にも注目した。それは「C・P・ギルマン『女の国』論のための覚え書」というタイトルのもと、本研究の研究成果報告書として印刷される。 そのなかであきらかにされることは、(1)ギルマンは一方で社会進化の必然性を認めており、その意味でダーウィニズムの影響をうけていること、(2)しかし社会進化の方法としては生存闘争よりは相互扶助を重視していること、(3)獲得形質の遺伝が否定されていることは認めつつも、結局のところ、遺伝という先天的な要因よりは教育という後天的な要因を強調していること、(4)したがって彼女とダーウィニズムとの関係は肯定と否定の入り交じったものであり、その意味でこの時代のフェミニズムとダーウィニズムの関係の縮図となっていること、などである。 本研究のもうひとつの目的は電子テクスト・アーカイヴの作成であったが、本年度はギルマンの作品を中心にその作業も進めた。
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