ヴィクトリア朝文学関連のハイパーメディアシステム構築のため、手始めに学術情報センターのサーバを使ってディケンズ・フェロウシップ日本支部の電子アーカイヴを構築した。これによって、ディケンズに関する基礎資料(年譜、伝記、評価、会報、文献など)を一般読者に還元するだけでなく、学情が推進している「オンラインジャーナルプロジェクト」を念頭に置き、私を含めた会員の論文を電子化して閲覧できるようにした。その他、メッセージ・ボード(BBS)をはじめインターネット関連の多くの媒体を使って、常に日本の英米文学関係の学会ホームページの手本となるように努めている。この実績を踏まえ、次年度は文学の枠を越えた研究者のよるヴィクトリア朝の学際的研究アーカイヴを学情に完成させたい。この環境整備は新設のメーリングリスト(victoria@lang.nagoya-u.ac.jp)で既に議論している。 昨年末までに、ギャスケルに続きギッシング(30編)とブロンテ姉妹(7編)の作品の電子化を完了し、ディケンズを含めた20人のヴィクトリア朝小説家の電子テクストを焼きつけたCD-ROMを国内外の研究者に配布している。マルチメディアテクストの作成に関しては、A Christmas Carolを使って段落数つきのハイパーテクストを作り、OEDその他の様々な辞書や資料を利用した注釈をリンクさせ、作品の解釈に資する画像、音声、映像ファイルを付け加えている。今回のマルチメディアテクストの最大の特徴は、BBSのプログラムを使ったフォームのページに従来の批評家たちの解釈を掲載し、不特定多数の読者が自分の注釈および解釈を新たな選択肢として書き加えることができるようにした点にある。今後、この種のハイパーテクストへのアクセスを様々なメーリングリストの会員に要請し、読者の読む行為と読まれるテクストの性質自体がどのように変化するかを分析する。
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